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銀時と桂と新八を残して、神楽は定春と万事屋を出た。の居場所が分かったとは言え、すぐに助けに行くということにはならなそうだし、あの重苦しい雰囲気にも、銀時の痛切な顔を見るのも耐えられなかった。

街のあちこちに真選組がいる。物々しい雰囲気に、街の人は不安そうに額を寄せ合って噂話をしている。まさか皆、江戸が大火に見舞われるかもしれないとは思ってもいないだろう。

神楽はふと路地に目を向けた。ふざけたアイマスクの真選組隊士がベンチで眠っていたので、衝動に任せてその眉間を傘の先で突いた。

「ふごぉおああ!!」

「こんな時に何してんダヨ? 税金泥棒」

沖田は額を両手で押さえてもがいた。

「何しやがんだよ、殺す気か……? こっちは連日働き詰めで疲れてんだよ……!」

「何言ってるネ! が見つかるまで馬車馬のように働けヨ!」

「俺は奴隷でもロボットでもねぇんだよ」

沖田は赤くなった額を押さえて、ベンチに座り直す。神楽はその真正面に立って、尊大に腕を組んだ。

「進展はあったアルか?」

「お前に報告することなんかなんもねぇよ」

「こっちだってのことずっと探してんだヨ」

「見つからねぇんだろ? こっちも同じだよ。そっちこそ、旦那は何か掴んでねぇのか? かぶき町じゃ顔効くんじゃねぇのかよ?」

「銀ちゃんああ見えてガラスのハートなんだヨ。もう6日も不眠不休で駆けずり回って、心折れてるネ」

「土方さんも不眠不休で働いてるよ」

「大丈夫アルか?」

「ほぉ、土方さんのことまで心配してくれるたぁ、お前、余裕あんな」

「そんなんじゃないアル。ちょっと、行き詰まって他に考えることないだけネ」

沖田は神楽を睨みあげた。番傘の下、青い瞳で沖田を見下ろす神楽はどこか落ち着いて見えた。

さんのこと、何か掴んだのか?」

神楽はその質問を鼻で笑い飛ばした。

「掴んでても、お前になんか教えるわけないネ」

「俺は警察だぜ? 重要な情報を持ってて提供しないってんなら、公務執行妨害で逮捕すんぞ」

「私はまだ知ってるとも知らないとも言ってないアル」

「じゃぁ、吐けよ」

「脅しかヨ」

「こっちだって切羽詰ってんだよ。何でもいいから教えろよ」

「イヤある」

「てめぇなぁ……」

沖田は腰の刀に手を掛ける。本気で神楽を逮捕するつもりなどないが、少し痛めつけてやれば吐くかと思ったのだ。いくら神楽が戦闘種族夜兎の生き残りとは言え、負けない自信はあった。

沖田の殺気を感じ取って、神楽は後ずさって距離を取る。ふたりの不穏な空気を感じ取って、道行く人々が足を止めた。神楽は傘を閉じて、それを刀のように構えた。

しばらくの沈黙。

先に動いたのは、定春だった。定春は神楽に寄り添うとその頬をぺろりと舐めた。

「ちょ、定春……!」

たったそれだけで、張り詰めていた糸がぷつんと切れた。沖田はため息をついて、刀から手を離した。

「……何なんだよ、ったく」

「へっ! お前が私に負けたらかわいそうだから、今回は見逃してやるネ!」

「犬とじゃれながら言っても説得力ねぇよ。それじゃぁな」

「あ、待つアル! お前!」

立ち去ろうとする沖田の背に向かって、神楽は叫んだ。その必死な声に、沖田は眉をひそめた。

「なんだよ?」

「お前、絶対のこと助けろよ!!」

「お前に言われなくてもやってやるよ」

「銀ちゃんは今回あんまり役に立たないアル!! あんまり期待すんなよ!!」

「? 何のことだか分かんけねぇけど。まぁ、覚えとくよ」

なぜ、神楽がそんなことを必死になって叫ぶのか、沖田には分からなかった。




20141124