24 銀時と桂と新八を残して、神楽は定春と万事屋を出た。の居場所が分かったとは言え、すぐに助けに行くということにはならなそうだし、あの重苦しい雰囲気にも、銀時の痛切な顔を見るのも耐えられなかった。 街のあちこちに真選組がいる。物々しい雰囲気に、街の人は不安そうに額を寄せ合って噂話をしている。まさか皆、江戸が大火に見舞われるかもしれないとは思ってもいないだろう。 神楽はふと路地に目を向けた。ふざけたアイマスクの真選組隊士がベンチで眠っていたので、衝動に任せてその眉間を傘の先で突いた。 「ふごぉおああ!!」 「こんな時に何してんダヨ? 税金泥棒」 沖田は額を両手で押さえてもがいた。 「何しやがんだよ、殺す気か……? こっちは連日働き詰めで疲れてんだよ……!」 「何言ってるネ! が見つかるまで馬車馬のように働けヨ!」 「俺は奴隷でもロボットでもねぇんだよ」 沖田は赤くなった額を押さえて、ベンチに座り直す。神楽はその真正面に立って、尊大に腕を組んだ。 「進展はあったアルか?」 「お前に報告することなんかなんもねぇよ」 「こっちだってのことずっと探してんだヨ」 「見つからねぇんだろ? こっちも同じだよ。そっちこそ、旦那は何か掴んでねぇのか? かぶき町じゃ顔効くんじゃねぇのかよ?」 「銀ちゃんああ見えてガラスのハートなんだヨ。もう6日も不眠不休で駆けずり回って、心折れてるネ」 「土方さんも不眠不休で働いてるよ」 「大丈夫アルか?」 「ほぉ、土方さんのことまで心配してくれるたぁ、お前、余裕あんな」 「そんなんじゃないアル。ちょっと、行き詰まって他に考えることないだけネ」 沖田は神楽を睨みあげた。番傘の下、青い瞳で沖田を見下ろす神楽はどこか落ち着いて見えた。 「さんのこと、何か掴んだのか?」 神楽はその質問を鼻で笑い飛ばした。 「掴んでても、お前になんか教えるわけないネ」 「俺は警察だぜ? 重要な情報を持ってて提供しないってんなら、公務執行妨害で逮捕すんぞ」 「私はまだ知ってるとも知らないとも言ってないアル」 「じゃぁ、吐けよ」 「脅しかヨ」 「こっちだって切羽詰ってんだよ。何でもいいから教えろよ」 「イヤある」 「てめぇなぁ……」 沖田は腰の刀に手を掛ける。本気で神楽を逮捕するつもりなどないが、少し痛めつけてやれば吐くかと思ったのだ。いくら神楽が戦闘種族夜兎の生き残りとは言え、負けない自信はあった。 沖田の殺気を感じ取って、神楽は後ずさって距離を取る。ふたりの不穏な空気を感じ取って、道行く人々が足を止めた。神楽は傘を閉じて、それを刀のように構えた。 しばらくの沈黙。 先に動いたのは、定春だった。定春は神楽に寄り添うとその頬をぺろりと舐めた。 「ちょ、定春……!」 たったそれだけで、張り詰めていた糸がぷつんと切れた。沖田はため息をついて、刀から手を離した。 「……何なんだよ、ったく」 「へっ! お前が私に負けたらかわいそうだから、今回は見逃してやるネ!」 「犬とじゃれながら言っても説得力ねぇよ。それじゃぁな」 「あ、待つアル! お前!」 立ち去ろうとする沖田の背に向かって、神楽は叫んだ。その必死な声に、沖田は眉をひそめた。 「なんだよ?」 「お前、絶対のこと助けろよ!!」 「お前に言われなくてもやってやるよ」 「銀ちゃんは今回あんまり役に立たないアル!! あんまり期待すんなよ!!」 「? 何のことだか分かんけねぇけど。まぁ、覚えとくよ」 なぜ、神楽がそんなことを必死になって叫ぶのか、沖田には分からなかった。 20141124 |