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「聞きてぇことがある」

そう言って、銀時は土方の前に山崎を突き出した。山崎は今にも泡を吹いて倒れてしまいそうな顔をしていて、土方は眉をひそめる。

銀時は静かな表情を浮かべていたけれど、底知れない悪意のようなものを感じて、土方は身構えた。

「何だよ。こっちはてめぇと違って忙しいんだ」

がどうしたって?」

その名を聞いて、土方は真っ先に山崎を睨んだ。

「山崎、てめぇ……」

「……すいません、副長。たまたま話聞かれちまって……」

真選組に尋問を受けていた銀時は、厠に立った時に天井から漏れ聞こえてくる声を聞いた。真選組が天井裏まで調べているのかと思ったのだが、「」という言葉が聞こえて、思わず木刀で天井を突いた。そこから、山崎が落ちてきたのだ。

「ってことは、本当なんだな。が誘拐されて行方不明ってのは?」

銀時は憤然と顎を上げて土方と山崎を睨んだ。

「何でそんなことんなってんだ? 説明しろよオラ」

土方は話す気なぞ毛頭なかった。銀時に頼るなぞ、そんなことするくらいなら腹を切った方がまだましだった。けれど、の命がかかっている。それは、恥も外聞も捨ててでも守らなければならないもののはずだ。そう自分に言い聞かせて、土方は苦々しい顔で山崎の肩を叩いた。

「……山崎。お前が話せ」

「え? いいんですか?」

「背に腹は代えられねぇよ」

その話を聞いて、銀時ははじめて事態を把握した。

おそらく、犬を拾ったというあの浪士が首謀者だと直感する。あの男達に感じた違和感は間違っていなかった。もしかしたら、あの時宿にはがいたのかもしれない。それに気づいていればと思うが、もう後の祭りだ。

「宿には?」

銀時の問いに、土方が答えた。

「総悟が向かったが、もぬけの殻だったそうだ」

「他に心当たりねぇのかよ?」

「それがここだったんだがな。ハズレだ」

「岩城屋のおっさんには?」

「そんな女は知らねぇとよ」

唐突に、銀時は土方の胸ぐらを掴んだ。

「……てめぇ、何スカしたツラしてやがんだよ」

その声は、静かだった。けれど、その計り知れない強さに、そこにいた全員が気圧された。怒り、と一言では言い尽くせない感情が、たった一言に凝縮されている。土方は静かな表情で銀時を睨み返したが、口を開きかけた土方を遮って、銀時は静かに続けた。

「真選組が、を守るんじゃなかったのか?」

銀時の呼吸が獣のように荒くなる。

「てめぇが、あいつを守るんじゃなかったのかよ?」

その唇と、声がぶるりと震える。銀時の目がぎらりと光って、土方の目を射た。

「あいつに、何してくれてんだよ……!?」

唇を噛み締めながら、銀時は潰れそうに拳を握っていた。その様はまるで、気の触れた獣のようで、誰も銀時に近寄ることも、触れることもできなかった。

ただ唯一、土方はどこか冷めた頭で、その燃えるような瞳を見ていた。銀時の怒りはもっともだと思えたし、こう図星を突かれては言い返す言葉もない。

俺は、に一体、何をしているのだろう。

手を尽くしてはいる。隊士達は皆血眼になってを探し、犯人を血祭りに上げようとしている。その指揮系統が間違っているとは思わない。けれど心に引っかかる、この無力感はなんだろう。まだ、のためにやらなければならないことがあるはずなのに、それが見えない。けれどそんな言い訳はしたくもなかった。

「……なんとか、言えよぉ!!」

銀時の重い拳が、土方を殴った。土方は防御もせず、その勢いのまま倒れた。

「ふ、副長!!」

山崎が土方を助け起こす。口内が切れて血を吐き出し、土方は銀時を睨みあげた。

銀時は無表情に言った。

「あいつに何かあったら、俺がてめぇを斬るからな」




20141124