14 神楽と合流した銀時と新八は、貿易商岩城屋の応接間にいた。 「本当に、ありがとうございます!」 と、神楽と同じ年頃の少女が満面の笑みで礼を言う。彼女が着ているTシャツには某米国の黒髪ウェーブショートヘアのセクシーなキャラクターがセクシーなウィンクをきめていて、それとお揃いの黒いウェーブヘアの犬、ベティちゃんは彼女の頬をぺろぺろと舐めていた。 「いいえ。で、代金の方なんですが……」 銀時の言葉に、少女の小間使いらしい男が分厚く膨らんだ茶封筒を差し出した。 「こちらになります。旦那様から、感謝のお気持ちです」 銀時はさっそく中身を検めた。新八が「ちょっと下品ですよ!」とたしなめたけれど、聞く耳を持ちはしない。 「一体どこで見つけてくださったのですか?」 「ある宿屋で世話をしてもらっていたみたいですよ。何でも、宿泊客の方が、雨に濡れていたところを保護してくださったんだそうです」 「そうでしたか。できればその方にもお礼をしたいのですが……」 「お名前は教えていただけなかったんです。宿屋はかぶき町のはずれにある……」 新八が事情を説明している間、銀時は金を懐にしまって、少女が抱きしめる犬を見ていた。その隣で神楽が供されたせんべいをばりばり齧っているのが耳障りだったが、我慢した。何があるという訳でもないのだが、気になった。 「どうしたネ? 銀ちゃん? ホームシックアルか?」 神楽がせんべいでべたべたになって手で銀時の頭を撫でた。 「やめろ。髪の毛べたべたになんだろが」 銀時はそれを振り払い、立ち上がる。と、犬の首輪から何か細いものがはみ出しているのが見えた。 「あのぉ、すいません。ちょっと失礼しますね」 銀時は首輪に手を伸ばして、その糸の端をつまむ。その時、銀時は直感的に理解した。 銀時は少女から犬をひったくる。悲鳴をあげる少女を振り払って、犬の首輪を引きちぎって窓の外に投げ捨てた。首輪は地面に落ちる前に、その大きさからは想像できないほど大きな炎を上げて爆発した。 それからの展開は早かった。厳戒態勢を敷いている真選組がすぐに駆けつけ、銀時らは重要参考人として尋問を受けた。爆弾魔との関わりを疑われて危うく逮捕されるところだったけれど、少女が「この人は私のベティを助けてくれたんです!」と涙ながらに訴えたことでなんとか説得された。 「この忙しい時に、てめぇは何してんだよ? 公務執行妨害で逮捕してやろかアァ!?」 普段の数倍不機嫌な顔で、土方が怒鳴った。 「何もくそもあるかぁ! こちとら爆弾テロからいたいけな少女を救ったんだよ! 感謝しろよオラぁ!!」 今にも斬り掛らんばかりに睨み合う土方と銀時を尻目に、近藤は腕組みをして屋敷の中を調べている隊士たちの陣頭指揮を執っている。その近藤に、新八が言った。 「近藤さん。これはどういうことなんですか?」 近藤は曖昧に笑って答えた。 「どうやら、攘夷志士の仕業らしい。岩城屋は火薬を扱ってる武器商人だからな、テロの標的になったんだろうさ」 「犯人の攘夷志士は、やっぱり僕たちが会ったあの宿屋の……?」 「その可能性が高いな。今、総悟に向かわせてる」 いつになく深刻な表情でそう言う近藤を見て、新八は首を傾げた。どこか、様子がおかしかった。 「近藤さん。何かあったんですか?」 「なんだ? 突然」 「いや、何だか皆ぴりぴりしてるから……。犯人はそんなに危険な人物なんですか?」 近藤は返答に困って、むっと口をつぐんだ。新八にはもちろん、万事屋の面々には、が行方不明になっていることは伝えていない。山崎が土方に口止めされたと聞いて、近藤もその気持ちを汲んでそれに従っている。 けれど、本当にそれでいいのだろうか? 「近藤さん?」 新八が近藤の顔を覗き込む。近藤は、無理やりからりと笑った。 「あぁ、すまない。安心していいぞ。真選組が必ず、犯人を捕まえてみせるからな!」 近藤の作り笑いに騙されるほど、新八は馬鹿ではなかった。 20141124 |