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土方に声をかけようとしたけれど、近藤はそれできなかった。が行方不明になってから、土方は見るからに憔悴している。爆弾テロ事件の調査と並行しての行方を捜しているが、その激務に加えて、が今どうしているか分からない不安が、土方の心と体を痛めつけているのがわかる。近藤が諦めて踵を返すと、ちょうど沖田がやってきた。

「総悟」

「土方さんは?」

「少し、そっとしておいてやれ」

近藤は沖田の肩を叩いて、土方の部屋を離れた。

「ずいぶん参ってるみたいだな、トシは」

「土方さんだけじゃねぇですよ。皆、さんを誘拐した犯人を血祭りにあげてやるって殺気立ってますぜ」

「誘拐犯の目星はついてるのか?」

「爆弾テロと何らかの関わりがあるとみて調べてます。監察方が、攘夷志士と繋がりがあるらしい岩城屋って貿易商を洗ってまして、もしそれが本当なら、さんがそこに囚われている可能性もあると思います」

「実行犯の、古高とか言ったか? そいつは自供したのか?」

「いいえ。感発入れずに尋問してるんですが、相当訓練された奴のようで。こういう時は土方さんに出てきてほしいもんなんですけど」

近藤は土方の部屋の方を見やった。

「明日の朝にでも、トシに話してみるさ」

沖田は近藤をじっと見上げて、唐突に言った。

「近藤さんは、今回の件どう思ってます?」

「どうって、何がだ?」

「攘夷志士が爆弾テロを起こして、その裏で岩城屋が手を引いているとしましょう。それについてさんが何か知っちまって、岩城屋にさんが拉致されたと考えるのは自然です。けど、その割に動きが静かすぎるとは思いませんか?」

「確かに、言われてみればそうだな」

さんが真選組の家政婦だって知って拉致したって言うなら、何かに利用するつもりなのかもしれません。それなら向こうからコンタクトを取ってくるはず。けれどそれがないっていうことは……」

「時期を見ているか、それとも」

さんがもう殺されてるってことだってありえます」

「おい総悟。それをトシの前で言ってやるなよ」

近藤の鋭い視線をいなすように、沖田は肩をすくめて見せた。

「とにかく、情報が少なすぎまさぁ。監察方にきりきりやってもらわねぇことにはどうしようもないですよ」

近藤は苦々しく唇を噛む。

「真選組がちゃんを守る。そう約束したはずだったんだがな……」

「そうなんですかぃ?」

「動乱の折にな。もう二度とこんな辛い思いはさせないと言った。けどこれじゃ、約束を破ったことになるのかな」

沖田は近藤を見上げて、じっと考えた。この真選組の総大将は、本気でにそう言ったのだろう。のことだ。それを本気で信じたのだろうと思う。可能性や確率や、そんなものには目もくれず、その言葉と目に見えない信頼だけを頼りにそう約束したのだろう。

時に、そんな約束は必要なのだと思う。心の安寧を守るためとか、そういう精神的なもののために。

いくつになってもそんな言葉を信じていられる近藤を、沖田は呆れながらもまぶしいような気持ちで見ていた。

「それは、さんが帰ってきたときに聞いてみましょうよ」

沖田の言葉に、近藤はからりとわらった。

「そうだな」




20141124