09 土方は夜も更けてから、屯所に戻ってきた。真夜中だというのに、対テロ行為の厳戒態勢に加え、の搜索のためにいつも以上の人員が割かれているため、屯所は昼夜を問わず騒がしかった。ローテーションを組んで、夜間も隊士がパトロールをしている。隊士は皆疲弊していたけれど、の身を案じて、皆必死に働いていた。 「あ、副長! お帰りなさい!」 山崎が言った。 「何か分かったか?」 土方の後を追い掛けながら、山崎が報告する。 「すいません、今のところはっきりした情報は……」 「爆弾魔の、なんつったっけか?」 「古高です」 デパートで捕らえた爆弾犯だ。 「何か吐いたか?」 「いえ、まだ何も。昨夜から夜通し尋問してるんですが、随分肝の座った奴で……」 「あの規模の爆発がこの1回きりで済むとは思えねぇ。古高って奴も爆発させた以外の火薬を持ってたんなら、それを今後使う計画があるはずだ。絶対に吐かせろ」 「はい。あ、それから、先日から調べていた岩城屋の件なんですが……」 土方はそこで足を止めた。岩城屋とは、貿易商で、攘夷志士に武器や火薬を不法に横流ししている疑いがある。以前から監察方に調べさせていたのだ。 「岩城屋がどうした?」 「古高が持っていた火薬の製造元が、岩城屋が取引している火薬製造元と一致しました。もしかしたら、この件、岩城屋との繋がりがあるのかもしれません」 「分かった。お前はそっちを徹底的に洗え。報告はこまめに入れろよ」 「はい!」 土方は仮眠を取るために部屋に戻る。明日の朝早くから会議があるが、不安な気持ちばかり浮かんできて眠れそうになかった。 土方の部屋の片隅に、がデパートで買ったという紙袋が置いてある。原田曰く、打粉をつくるためにが買ったらしい。隊士全員分の打粉を作る気だったというからまたとんでもないことを始めようとしたものだ。 土方はその紙袋を手にとって、けれどそれをどうしていいか分からず、無意味に別の場所に置き直した。刀を床の間に納め、隊服を着物に着替える。煙草が短くなったので、灰皿を探すが、ここ数日の吸殻が山になっていた。なんとか隙間を作って火種を潰して、それでもまだ口が寂しかったので、煙管を取り出して火をつけずに咥えた。ため息が出た。唐突に、どうすればいいのか分からなくなった。もう今日の仕事は終わったのだから、明日に備えて眠ればいいのに、体が動かなかった。何も考えられないし、指先にすら力が入らない。 こんな風にがいなくなるなんて、思っていなかった。休暇や何かで屯所を空けることは今までにも何度かあったけれど、理由はいつも分かっていたし、帰ってくると分かっていれば何の不安もなかった。 けれど、こんな風に事件に巻き込まれて姿を消すだなんて、予想もしていなかった。どうしてこんなことになってしまったのだろう。動乱以来、が外出するときはいつも隊士に付き添わせ、万全の対策はしてきたつもりだった。それは、全て無駄だったのだろうか。 土方は手のひらに顔を埋めるようにしてため息をついた。のことをぐるぐる考え出すと止まらなかった。 20141124 |