06 この日、坂田銀時は行方不明のペットを探して江戸の町をふらついていた。ある貿易商の一人娘が可愛がっていた犬(ベティという名前のプードル)が散歩の途中に逃げ出してしまったらしい。神楽と新八も、別れてベティちゃんを探しているはずだけれど、手がかりは写真1枚しかないので、この広い江戸の街をすみずみまで探すとなると気分も萎えてしまう。 チュッパチャップスを咥えてふらふらと歩いていると、真選組のパトカーがスピードを上げて銀時を追い越していった。確か昨日、大江戸デパートで爆弾テロがあったとニュースになっていたから、そのせいだろう。全く、騒がしくて敵わない。 と、そのパトカーが勢いよくバックしてきて銀時の真横に停車した。 「万事屋の旦那!」 顔を覗かせたのは、監察方の山崎だった。 「おぉ、ジミー」 「山崎です。旦那、さん、見ませんでした?」 「あぁ? ?」 昔馴染みの名前を聞いて、銀時は首を傾げる。なら真選組で家政婦をしているのだから、その動向なんて真選組の方が詳しく把握していそうなものなのに。 「知らねぇよ。何? なんかあったの?」 「実はですね……」 とその時、助手席に座る誰かに後頭部を蹴られて、山崎は妙な悲鳴を上げた。助手席にいたのは土方だ。相変わらずの咥え煙草に、機嫌が悪そうな顔で毒づいた。 「悪ぃな。何でもねぇから気にすんな」 「がどうかしたのか?」 「ちょっと目ェ離したすきに見失ったんだよ。どうせすぐ見つかる」 土方は「おらさっさと出せ」と山崎を小突いて、そのまま発進してしまった。取り残された銀時は訳が分からず、口の中でチュッパチャップスを転がした。 一方、パトカーの中では、山崎が後頭部にできたたんこぶをさすりながら、涙目になって言った。 「副長! なんなんですか!? いきなり!?」 土方は助手席で足を組み、不遜な態度で答えた。 「野郎に余計なことしゃべってんじゃねぇよ」 「余計なことって何ですか? 万事屋の旦那なら、さんのこと、何か知ってるかもしれないじゃないですか」 「何か知ってたら、あの態度は取らねぇよ」 「何も知らないならなおさら、ちゃんと事実を伝えたほうがいいんじゃ……」 「野郎に余計なこと吹き込んだら、切腹させっかんな」 土方は無表情にそう言った。それ以上山崎は何も言えず、黙ってハンドルを操る。 が行方不明になってから、土方は触れるもの全て斬り捨てんばかりに機嫌が悪い。真選組動乱があって以来、の身辺については特に気を回していたけれど、そんな厳戒態勢のなかでが行方不明になってしまった。後悔や悔しさを心の中に抱えきれず爆発しそうになっているのだということが、隣にいる山崎にはよく分かる。正直、息苦しくてたまらなかった。 といっても、これは土方だけの話でなく、真選組の隊士達は皆、気が気ではなかった。真選組はじまって以来、身内の人間が人さらいに合うなど今までなかったことなのだ。 山崎は焦る気持ちを抑えて、ぎゅっとハンドルを握り締めた。 20141124 |