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どうしてあんな事を言ってしまったのかは分からない。自分の事なのに分からないことは、それこそ両手で数えきれないほどある。分からないことに慣れてしまっていると言ってもいいかもしれない。諦めていると言ってもいいかもしれない。

けれど今回ばかりは、そんな投げ遣りな選択肢を選びたくはなかった。

告白をしてくれたのは、若菜結人。通じ合わない気持ちや言葉をなあなあにしたまま別れて暮らす家族ではない。甘えてはいけない人だ。気持ちも言葉も足りないかもしれないけれど、伝えなければいけない人だ。努力をしなければならない。





「どうしてあんな事言ったの?」

郭が淡々と事務連絡でも伝えるみたいな声で聞くから、若菜は心の隅を苛立たせて眉を寄せる。そんなことこっちが聞きたかったけれど、そんな風に答えたらさらに追及されそうで言えなかった。

真田が二人の斜め後ろでひやひやと視線を泳がせていた。

「……が好きだから」

「だからってあんな公衆の面前で告白しなくたっていいんじゃない? さん困ってたよ」

「言いたくなっちまったんだから仕方ないだろ」

「何怒ってるの」

「怒ってねぇよ」

「あっそう」

郭が何を言いたいのか、若菜には分からなかった。当然かもしれない。若菜自身、自分がどうしてあんな事を言ってしまったのか分からなかった。

を好きな気持ちは本当だけれど、だからってこんな場所で告白しなければならないほど切羽詰まっていた訳ではない。ならどうして、と考えて考えて、昨日話をしたの様子がおかしかったから、という結論にしかいたらなかった。に責任を押し付けるみたいだから、こんなことは死んでも口にしたくない。けれどこれはどうしようもない真実だ。否定できない。

は、俺のことどう思ってると思う?」

つい聞いてしまって、若菜はようやく自分が弱気になっていることを自覚した。に好かれている自信なんか、これっぽっちもないんだと気づく。そして自分に打ちのめされた。

「嫌われてはいないんじゃないの」

と、郭が言う。

「え、まじで?」

「好かれてるとも思わないけど」

その理不尽な物言いに、若菜より真田が狼狽した。若菜はいかにも正しい言葉を突きつけられてさらに打ちのめされた。落ち込んで、猫背になる。

「だよな。俺もそう思ってた」

「じゃなんで聞くの」

「俺にも分かんねぇよ」

「あんまり、無責任なことするもんじゃないよ」

「……だな」

「ちゃんとさんに謝りなよ」

「……分かった」

郭に説教される若菜を痛わしく眺めながら、真田は同時に郭にも疑問を抱く。どうして郭はあんなに一生懸命を庇うんだろうか。もしかして郭もを好きになったんだろうか。だから若菜を責めるんだろうか。いや、郭はどんな理由があっても若菜を傷つけるようなことは言わない。言ったとしてもそれは冗談の範囲内で、若菜も冗談を冗談でやり返すテンションがある時だ。

今は若菜が間違った事をしたから、郭が正当性をもって若菜を諌めている。それだけのはずだ。昔からそうしてきたように、若菜のやんちゃな性格と郭の真面目な性格が対立しているだけだ。

けれど、感じるこの違和感は何だろう。二人の間にという女子が介入したことが、一体どんな意味を持つと言うのか。考えて考えて、やっぱり真田には分からなかった。





その後、風祭と天城の勝負はどっちが勝ったのか負けたのか曖昧なまま終わってしまって、集まったメンバーも各々好き勝手に解散した。

は若菜に話しかけようとしたその時、玲に呼ばれてしまってタイミングを逃してしまった。玲は話があるから飛葉中の校舎で待っていて欲しいと言う。それくらいならなんて事はないけれど、そんな話をしている内に若菜は郭と真田と一緒に姿を消してしまっていた。

今日はもう話はできないなと思って、は曖昧に嘆息する。ほっとしたのか、残念に思ったのかも分からないままだった。



20090910