鏡に映った自分の顔を見て
はげんなりした。泣き腫らした赤い目、むくんだ頬。覚悟はしていたけれど、ここまで酷い顔をしているとは、落ち込むを通り越して呆れてしまう。
銀時とさっちゃんがこの離れに忍び込んできたことは、夢の中の出来事のように思えるほど現実味がない。願望が夢の中で幻を見せたのかとも思えたが、銀時に肩を強く抱きしめられた時の感触がまだ肌の上に残っている。それは鋭い棘が深く肌に沈み込んでしまったように鈍い痛みを残していて、あれは夢ではないのだと静かに訴えかけているようだ。
銀時とさっちゃんが部屋から出て行ったあとすぐ、少女が戻ってきた。ひとり部屋の真ん中で泣き崩れていた
を、少女は理由も聞かずに抱きしめてくれた。吉田に拉致されてもう四日だ。その辛さを察してか、何も聞かないでいてくれたことは
にとって幸いだった。ふたりがここに忍び込んだことが吉田にばれてしまっては困る。結局、嗚咽しながら少女と手を繋いで眠った。まるで十に満たない子どものように。
真選組の家政婦として働き、毎日掃除、洗濯、炊事と諸々の雑務をこなし、荒っぽい粗忽者の真選組隊士の前ではそつなく振る舞って、面倒見のいい姉さん分のような顔をして大人ぶっていたけれど、小さな子どものようにわがままで聞き分けのない子どもが自分の中にもいるということが、
には自分のことながら信じられなかった。
銀時の前であんなに手放しに泣いたのは初めてだ。銀時はああ見えて気にしすぎる性格をしているから、あまり気に病んでいないといい。
でも、今まで一度も銀時にわがままを言ったことはないのだから、一生に一度のお願いだと思って黙って聞き入れてくれてもいいのじゃないかしら。銀時や、桂や高杉には、助けられてやるわけにはいかないのだ、絶対に。秘密を守るために、大好きな人に嫌われないために。ほとんど意地だ。けれど、銀時が差し伸べてくれた手を振り払ってしまった今、開き直るほかない。
「
さん、朝食をお持ちしましたよ」
少女がお膳をもって部屋に戻ってきた。
は背筋を伸ばして胸を張り、泣き腫らした目で微笑んだ。
「ありがとう。顔を洗ってくるから、待っていてくれる? 一緒に食べましょう」
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