「古高が吐いた」
早朝の真選組屯所。
緊急に招集された会議の席で、土方は開口一番に言った。
「吉田利麿率いる徒勇隊が、風の強い日を狙って江戸各地に一斉に火を放ち、その混乱に乗じて将軍を暗殺する計画を立てている。あの大量の火薬はそのために集められたものだ。既に押収している以上の火薬が江戸各地に仕掛けられている可能性があると考えて間違いない」
驚きにざわめく隊士たちを前に、近藤が鋭い声を上げる。
「真選組をはじめ、見廻組ほか、江戸の警察組織全てに通達を出すよう松平のとっつぁんに連絡した。今この時から、警戒レベルを引き上げる。が、そもそも真選組の管轄内で起きた事件だ。俺達でかたつけるつもりで、みんな気を引き締めて行けよ!」
応、と声をそろえた隊士達の中から、腕が一本、するりと伸びる。
「
さんのことについては、何か分かったんですか?」
原田がよく通る太い声で言った。
土方は傍目にも明らかに表情を曇らせる。誰もがそれを見ただけでよい知らせはないのだと察することができた。
「……それについては、新しい情報は何もない」
「今後の尋問で何か分かりそうですか?」
「いや、どうやら本当に知らんらしい。これで古高への尋問は打ち切る」
「じゃぁ、今後の捜査は? まさか、どこにいるかも分からねぇ
さんと、どこにあるかも分からねぇ火薬を手掛かりもなく探し回れと?」
「それ以外に何か方法があんのか?」
隊士たちは一斉に肩を落として嘆きの声を上げた。この広い江戸中、何の手がかりもなく爆発物を捜索しなければならないなんて狂気の沙汰だ。
土方は声を張り上げて一喝した。
「ぐだぐだとだらしねぇこと言ってんじゃねぇ! 江戸中の市民の命がかかってんだぞ!」
「そんなこと言ったって……」
「本当に手あたり次第にやるしかないんですか?」
「監察方が岩城屋から押収した資料を当たっているから、そっから何か出てくるかもしれねぇ。それとも、徒勇隊に関わる攘夷浪士をもうひとりでも捕まえられりゃぁな」
「そんなぁ」
「情けねぇ声出してんじゃねぇ。ことは一刻を争うんだ。まずは江戸城を中心に捜査する。そこから徐々に範囲を広げていくぞ。捜査中は何があっても臨機応変に対応できるよう、回線は常に開けておけ」
土方は部屋を出て行きしな、小姓の佐々木鉄之助に「少し休んでくる」と呟いた。
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