その頃、新八はとある宿屋の庭先にいた。
 黒い毛並みのプードルが繋がれていて、人懐っこい性格をしているらしく新八の膝にすり寄ってくる。新八は依頼人から預かった写真と犬を見比べて確信を持った。

「やっぱり、この子で間違いなさそうです。どこで見つけてくださったんですか?」

 宿の女将はにこやかに答えた。

「いえね、こちらにお泊まりの方が雨に濡れてたところを不憫に思って連れてきたんですよ。私もそういうのに弱くてねぇ。飼い主の方が見つかって良かったわ」
「そうだったんですか。ありがとうございます。依頼主の方にも女将さんのこと、伝えておきますね」
「いいんですよ、そんなこと」
「良ければ、犬を拾ってくださった方にもご挨拶したいんですけれど」
「申し訳ないんですが、今はお出掛けになられてるんですよ」
「それじゃ、せめてお名前だけでも……」
「お母さん!」

 と、縁側に駆けてきた少女が大声を出して女将を呼んだ。女将はまなじりを釣り上げて怒鳴った。

「これ! お客様の前ですよ!」

 少女は慌てて居住まいを正して頭を下げる。よほど慌てているのか、結い上げた髪がほつれている。

「す、すいません。でも、あの……!」

 少女は新八の姿を見つけるなり息を飲んだ。部外者には聞かせられない話があるようだった。

「あ、僕はこれで失礼します。お忙しいところすいませんでした!」

 新八は犬を抱いたまま頭を下げ、足早に宿を後にした。早くこの犬を飼い主のところへとどけなければ、早く銀時と合流しを探さなければと、気持ちが焦っていた。

 新八は、宿でこの時何が起こっていたのかを確かめなかったことを、後になってひどく後悔することになる。








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