「銀ちゃん、帰ってこなかったみたいアルな」
「まったく。どこまで行っちゃったんだろうね、本当」

 朝一番に万事屋に集合した神楽と新八は、朝食の卵かけご飯を口にかき込みながら、銀時への文句をこぼしている。新八は志村家には帰っておらず、神楽とふたりでほとんど夜を徹して迷い犬を探していた。まだふたりとも若いので、多少の無茶は屁でもなかった。

「何か手掛かりのひとつでも掴めればいいんだけどね」
「ヅラなら、何か知ってるんじゃないアルか?」
「そうかもしれないけど、爆破テロ事件が起きてから江戸中の警備が厳しくなってるから、桂さんも身を隠すのに必死なんじゃないかな。銀さんはきっと、方々探し回ってるんだよ」
、無事でいてくれるといいアルな」
「そうだね」

 神楽と新八は同時に茶碗を空にすると、ぬるいお茶でそれを流し込み、汚れた食器を流しに片付ける。その間に、定春もドッグフードを食べ終わりトイレを済ませた。

「さぁ、行くアルか」
「今日中に犬を見つけて、僕たちもさんを探そう。銀さんのことも心配だし、早く合流しないと」
「また何か無茶してないといいアルけどな」
「それ、神楽ちゃんが言うんだね」

 万事屋を出て、ふたりはすぐに二手に分かれた。





「僕、これから出掛けるからね」

 吉田がの部屋を覗きながらにこやかに言った。
 は右手にペンチ、左手に銀杏を持って吉田を睨んだ。ボールに山盛りになった銀杏は、宿の前庭に立ついちょうの木から落ちた実を拾い集めてきたもので、部屋に閉じ込められて時間を持て余したの格好の暇つぶしになっていた。

「そうですか」
「いってらっしゃいは? 言ってくれないの?」
「吉田さんがもう二度とここに戻ってこないなら言って差し上げますけど」
「……ひとまずは元気そうで安心したって言っておこうかな」

 はふわりと微笑みながらペンチをぎゅっと握る。ひときわ大きな銀杏がぱきりといい音を立ててひび割れた。

「それはどうも」

 宿には昨夜から吉田の仲間達が宿泊していて、どことなく騒がしい雰囲気がしている。にその姿は見えないのだが、障子や天井から密かに見張られているような気がして落ち着かなかった。吉田は出掛けるというが、誰かを共に連れて行くか、それともの見張りに誰かを残して行くのか、理解できる手がかりもない。

 吉田と入れ替わりに部屋にやってきた少女は、篭にどっさりと盛られた銀杏を持ってきた。

「これもお願いしますね」
「まぁ。腕がなるわぁ」

 は清々しく笑いながら腕まくりをした。








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