山崎は、事の次第を話し終わるなり深々と頭を下げた。

「お願いします。さんを探してください」

 それを見下ろす銀時の眼差しは氷のように冷たく、新八と神楽は戦慄する。銀時がこんな顔をするところを見ることは、ふたりでも滅多にないことだった。

「探して欲しいって、なんだよ。生きてるか死んでるかも分かんねぇのにどう探せって?」
「まだ死んだと決まったわけじゃありません! ただ、現場付近にいたことは間違いないようで、複数の目撃情報があります。でも、死んでしまったという証拠が出てこない限りは、僕たちは誰もそれを信じません」
「立派なこと言ってるように聞こえるけどよ、つまりがどこにいるか生きているかどうかさえ手掛かりも何にもねぇってことなんだな」

 銀時は山崎の胸ぐらを掴む。山崎は怯んだが、拳をひとつ受けるくらいは覚悟の上だった。毅然と銀時を見返す山崎に、銀時の方が怖気づいた。

「銀さん。さんを探しましょう」
「そうアル!こんな奴らに任せて置けないネ! 万事屋にかかればすぐに見つけ出せるアルよ!」

 新八と神楽に背中を叩かれ、その勢いに銀時は眉をしかめた。新八はともかく、神楽の拳は腰に響くほどよく効く。腰をさすりながら、銀時は山崎にではなくふたりに答えた。

「わーったよ、ったく。しょーがねぇな」
「本当ですか!? ありがとうございます!」

 山崎は再び勢いよく頭を下げるが、銀時はそれを無視して踵を返した。

「勘違いすんな。お前の頼みを聞くわけじゃねぇよ。新八、神楽、犬はお前らに頼むわ」
「僕たちもさんを探しますよ! 人はひとりでも多い方がいいでしょ?」
「けど、そっちだってもう一週間も預かってんだ。ここは二手に分かれようぜ。先に済んだ方が、済んでない方を手伝う。いいな?」
 
 新八と神楽は不服そうな顔をしたけれど、顔を見合わせて頷いた。
 山崎はほっと胸を撫で下ろす。敵に回すと厄介な相手だが、味方となればこれ以上頼もしい人物は他にいない。銀時の背中に向かってもう一度頭を下げた山崎は、駆け足で現場に戻った。





 新八、神楽と別れた銀時は、あてもなくふらふらと歩き続け、知らず知らずのうちに人通りの少ないさびれた路地裏に足を踏み入れていた。

 日差しも届かない暗い路地は土埃と排水で汚れていて、水溜りにはボウフラが浮いている。道端で酔いつぶれて眠っている男、ゴミ捨て場のゴミ袋を破いて、野良猫が生ゴミを漁っている。
 銀時は青いポリバケツを渾身の力を込めて蹴とばした。ポリバケツは派手な音を立てて真っ二つに割れ、男は飛び起き、野良猫は悲鳴をあげて銀時を威嚇する。音に驚いた鳩が電線から電線へ飛び移る羽音。
 銀時は腹の底が煮えくり返るほどの激しい怒りに体中を震わせていた。もしも、本当にが死んでしまっていたとしたら。そう考えると、叫びだしたいほどの激情が襲ってきて体中火だるまになってしまいそうだった。
 八つ当たりをしてどうにか気を落ち着けた銀時は、どうにかふらふらと足を踏み出す。
 手掛かりになりそうなことは、案外近くに転がっているものだ。山崎は、あの爆破テロは過激派攘夷志士が起こしたものだと言っていた。
 攘夷志士のことは、攘夷志士に聞くのが一番だ。








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