![]() 昔々ある国に、小さな街がありました。街の周りを鬱蒼とした森に囲まれた、とても小さな街でした。 この街に、という娘が住んでいました。生真面目で、よく働き、街人からも評判の気立てのいい娘でした。 には、血の繋がらない3人の兄弟がいました。3人の名前は、桂小太郎、坂田銀時、高杉晋助といいました。4人は幼い頃、実の両親に捨てられたところを、街で教師をしていた吉田松陽という男に拾われ、家族同然に一緒に育ちました。 けれど、吉田は5年前の大嵐の日に起きた洪水に巻き込まれ死んでしまいました。それ以来4人は、互いに協力し合って暮らしていましたが、生活は決して楽ではありませんでした。桂は狩人でしたが、その腕前は街の狩人の中でも最低でしたし、銀時は何でも屋と言えば聞こえはいいですがその日暮らしのプー太郎、高杉に至ってはどんな仕事をしているのか誰も知りませんでした。 は生活を支えるため、身を粉にして働いていました。朝は街の誰よりも早く起き出し、牛乳配達の手伝いをしました。その仕事が終わると家に戻って、家事と、畑とにわとりの世話をしました。夕方にはレストランで給仕をし、夜遅くまで働きました。 それでもお金が足りないときは、街1番の商人、坂本辰馬に借金をすることもありました。桂、銀時、高杉ととても気の合う坂本は、気前よくお金を貸してくれました。ただし、どのくらいの利子がついているかは大きな声ではいいませんでしたけれど。 厳しい生活を送っていても、に不満はありませんでした。血が繋がってはいないとは言え、家族みんなと一緒に暮らしていられることが、何よりの幸せでした。 さて、その日もは夜遅くまで働き、へとへとになって家へ帰って来ました。足はぱんぱんにむくんで、手のひらはあかぎれだらけ、服にはお客さんの吸う煙草やお酒の匂いが染み付いていて、全く嫌になってしまいます。けれど、これも全て、大切な兄弟たちのためです。は桂、銀時、高杉のことが大好きでした。こんな夜中にはきっと皆、夜の街でお酒に溺れていることうけあいでしたが、みんなが元気に楽しく暮らせているのなら、は多少のことには目を瞑ることにしています。 だから、家の扉を開けた瞬間、大きなクラッカーの音が弾けた時は本当に驚きました。 「「「「誕生日、おめでとう!」」」」 と、桂、銀時、高杉の3人が、声をそろえて言いました。 「……どうしたの? これ」 驚きのあまり、はクラッカーから飛び出した紙テープを頭からかぶって、ぽかんとしました。 「自分の誕生日忘れてんなよ」 銀時が呆れたように言いました。 「そうだぞ。いくら仕事が忙しいとはいえ、記念すべき18才の誕生日を忘れるなど!」 桂が腕組みをして叱るように言いました。 「誰のせいで誕生日も忘れるほどこき使われてんだか」 高杉が嫌味っぽく笑って言いました。 「まぁまぁ! めでたい日には変わりないきに!」 坂本が豪快に笑って言いました。 今日はの18才の誕生日だったのです。 テーブルの上には、プレゼントが4つ並んでいました。それを見て、は顔をほころばせました。 「ありがとう、みんな」 はプレゼントをひとつずつ手に取りました。1つ目は、筆箱くらいの大きさの縦長のプレゼントです。開けてみると、薔薇の形をかたどった赤い石のペンダントでした。 「まぁ、素敵なペンダント」 「それは坂本からのプレゼントだ」 桂が言いました。 2つ目は、手のひらくらいの大きさの正方形のプレゼントです。開けてみると、薔薇色の手鏡でした。 「まぁ、かわいい手鏡」 「それは桂からのプレゼントだ」 高杉が言いました。 3つ目は、肘から指の先くらいまでの大きさの三角形のプレゼントです。開けてみると、柄に薔薇の模様をあしらったナイフでした。 「まぁ、よく切れそうなナイフ」 「それは高杉からのプレゼントだ」 銀時が言いました。 「っていうか、なんでナイフ?」 「護身用だ」 高杉がすまして答えました。 4つ目は、真っ赤な薔薇の花、1輪でした。 「まぁ、きれいな薔薇の花」 「それは銀時からのプレゼントじゃ」 坂本が言いました。 「ありがとう、銀さん」 はお礼を言いましたが、銀時は浮かない顔をしています。しまいには、青ざめて泣き出しそうな顔をしだしたので、みんなは不思議そうに顔を見合わせました。 「どうした? 銀時。なにか悪いものでも食べたか?」 「どっかで拾い食いしてきたんじゃねぇ?」 「いくら銀さんでもさすがにそれは……。また賭け事で派手にスっちゃっただけでしょ?」 「それとも、病気でも移されたか? いい病院紹介してやろうか?」 「お前ら揃いも揃ってひどくねぇ?」 銀時は両手で顔を覆ってうなだれました。その様子が、あまりにも本気で落ち込んでいる様子だったので、4人は銀時の話を聞いてやることにしました。 20150309 |