知らないあなたが底にいる







 うだるように暑い、夏のある日。

 珍しく、坂田銀時が真選組屯所を訪ねてきて、土方十四郎はほとんど喧嘩腰で門の前に立った。
 ただでさえ湿度の高い粘りつくような空気が不快指数を押し上げているというのに、死んだ魚のような目をした男の顔など見たくもない。

「一体、何の用だ?」

 土方は煙草の煙を吐きながら、傲然と顎を上げて言う。

「いやぁ、ちょっとねぇ? のっぴきならない事態になっちまって、お前には伝えておかなきゃと思ってさ」

 銀時は首の後ろをぼりぼり掻きながら、歯切れ悪く言う。そのへらりと笑った口元にいらついて、土方は額に青筋を立てた。

「なんだよ? ようやく自首してこれまでの罪を洗いざらい吐く気になったか?」
「自首しなけりゃならねぇほどの罪を犯した覚えはねぇよ。今日は俺の用じゃなくて、どっちかっていうとお前のだ」
「俺の?」
「言っておくけど、これ俺のせいじゃねぇからな。事故だから、不慮の事故だから! 絶対に怒るなよ!」
「それは話によるだろ。もったいぶらねぇでさっさと言え」
「……本当に怒るなよ?」
「だっかっらっ! なんだよ一体!?」

 銀時は後ろを振り返ると、下の方に目線をやってぼそぼそと何かをしゃべった。その怪しい態度に、土方は眉をひそめて銀時の後ろを覗き込んでみた。

「ほら、お前から話せよ」
「えぇ!? やだ、無理無理、絶対やだ!」
「俺だっていやだよ」
「銀さん、もう大人なんでしょ!? 子どもに押し付けないでよ!」
「大人になってもいやなことはいやなんだよ。そういうの案外変わんねぇんだぜ。甘えてんじゃねぇぞこら」
「おい。誰だそいつは?」

 土方は、火の着いた煙草を指に挟んで、銀時の後ろを指差した。そこにいたのは、首輪をつけた犬ではなく、人の子だった。銀時の腰にやっと届くかというほどの背丈で、朝顔の着物に浅黄色の帯を締めている。七つか八つくらいの女子だ。

「なんだ、迷子か? だったら屯所じゃなくて交番へ行け」
「いや、迷子じゃなくてさ。ほら、お前、こいつの顔に見覚えねぇ?」

 銀時は子どもの肩を掴んで、無理矢理土方の前に押し出した。

 子どもは緊張した面持ちで土方を見上げると、あたふたと頭を下げた。肩の辺りで揃えたおかっぱ頭で、肌は健康的に日に焼けている。手首が細くて、草履をひっかけた足の指が小さい。

 土方にじろりと睨み付けられ、子どもは怯えて肩を震わせた。

「どこかで会ったか?」

 子どもはおどおどとして答えられず口ごもる。見かねた銀時が子どもの隣にしゃがんでその背中を撫でてやると、子どもは母猫とはぐれた子猫のような目をして銀時に体を寄せた。

「どこかで会ったというか、これから会うというか、なぁ」
「どういう意味だよ」
「これ、
「はぁ?」
「だから、だって」
「ただのガキじゃねぇか」
「だから、ガキの頃のなんだよ」
「……お前、頭でも打ったのか?」
「本当にそうだったんなら良かったんだけどなぁ」

 土方は改めて、銀時にしがみついている子どもの顔を見た。

 の顔を頭の中に思い浮かべている。美人というわけではないが肌が白くて、笑うと弓なりにしなる唇、いつもにこにこと笑っている瞳、背中まで伸ばした髪はいつもひとつに結っていて、家事のために荒れた手をしているがいつも清潔に整った爪がきれいで。

 ところが、目の間にいる子どもは、いぶかしむように土方を見上げる目は曇り、唇は固く引き結ばれている。日に焼けた肌、銀時の着物を握りしめる小さな手はかたくなだ。

 土方はいらいらと煙を吐き出しながら、唇を噛みしめて言った。

「最初から話せ」





銀時の話はこうだった。
 
今日の昼過ぎ、は万事屋を訪れ銀時と談笑していた。新八は道場でホームレス相手に剣術の稽古をしていて、神楽はそよ姫に会いに江戸城に出かけていて留守だった。

ふたりでが作った白玉あんみつを食べていたところ、来客があった。坂本辰馬という商人で、銀時とは古い馴染みなのだという。快援隊という商社を経営していて、自ら船に乗り込み、宇宙を股にかけて商売をしているのだが、とある星で手に入れた珍しい品を銀時に見せにやってきたのだという。

それは、小さな瓶に入った赤と青のキャンディだった。

ところが、輸送中の気温が高かったのか、キャンディは小瓶の中で溶け、粒同士がすっかりくっついてしまっていた。そこからどうにか赤いキャンディを二粒取り出して、がそれを食べた。レディーファーストだと、坂本が笑って言ったのだ。

 まさかこんなことになると分かっていたら、坂本が持ってきた怪しげなキャンディなぞ、に食べさせるわけはなかったのだがと、銀時は言いわけがましく言った。





「で、そのキャンディを食べたらが子どもになった、と?」
「そうなんだよ。知ってる? 一粒食べると十歳若返るふしぎなキャンディ、その名も手塚印のミラクルキャンディ」
「他人の漫画の設定そのまんま持ってきてんじゃねぇよ。しかも相手神様じゃねぇか、罰当たっても知らねぇぞ」
「うるせぇ。このキャンディは手塚星の特産品で、断じてパクリではありません、オマージュです」

 土方は銀時を殴り飛ばしたい気持ちを必死で抑えて、なんとか言う。

「二粒食ったってことは、二十歳若返ったってことか?」
「そうだな」
「だったら青いキャンディ二粒食えば解決するんじゃねぇの?」
「言っただろ。キャンディは溶けてべろべろになっちゃって、赤も青も混ざって紫色になっちゃったんだよ」
「解決策ねぇって言いてぇのか?」
「いや、その坂本って奴が船出してくれっから、俺ちょっくら行って青いキャンディ調達してくっからさ、俺が戻ってくるまでのこと任されてくんない?」
「はぁ!? なんで俺が!?」
「元々ここに住んでんだから当然だろ」
「一緒に連れて行けばいいじゃねぇか」
「何があるか分かんねぇのに連れていけるわけねぇだろ」
「ここは武装警察真選組の屯所だぞ。こんなガキ置いておけるわけねぇだろうが」
「今はガキとは言えだぞ。そんな言い方すんなよ」
「だいだい、今の話を信じる義理もねぇぞ。いくらなんでもそんなおかしな話があるかよ」
「信じねぇのは勝手だけどな、待っててもは帰って来ねぇぞ。こいつが本物なんだからな。教えてやらねぇとお前が心配して眠れぬ夜を過ごすことになるだろうと思って、俺はわざわざ知らせに来てやったんだぞ、ちょっとは感謝しろよ」
「誰が眠れぬ夜だ、夜はちゃんと寝るわ」
「あ、あの……!」

 と、言い合いをするふたりの間で小さな声が上がる。

 見ると、が頬を真っ赤に染めて、こぶしを握り締め、必死な形相をして土方を睨んでいた。
 呆気にとられた土方と銀時は口をつぐむ。

「む、無茶なことをお願しているのは、分かっているんですが、どうか助けていただけませんか? どうしてこういうことになっているのか、私にも分からないんですけれど、銀さんが、こういうのだから、きっと、そうなんだと思うんです」

 土方は咥え煙草をしたまま小さなを睨む。は頬を真っ赤に染めて、必死の形相だ。取り繕う余裕もなく、怒っているような、今にも泣きだしそうな顔をして、まだ小さな頭を懸命に振り絞っている。

「その根拠は?」

 土方の咎めるような口調に、銀時は「大人げねぇなぁ」と口の中だけで呟いて、非難がましく土方を睨んだ。

 は小鬼のように真っ赤になって、ほとんど怒鳴るように言った。

「銀さんは! 私が本当に困ってるときに嘘ついたりしないもん!」

 土方と銀時は気まずく見つめ合う。
 雨音のような蝉の鳴き声がひときわ大きく響く。

「じゃ、そういうことだから。土方くん、俺行くわ」
「おぉ、気を付けて行って来いよ」
「本当、のことはよろしく頼むぞ」
「分かってるって」
「そいじゃな、。できるだけ急ぐけど、気長に待っててくれな」

 銀時に去り際頭を撫でられて、はすがるような目をして銀時を見たけれど、ごしごしと目をこすると気丈に笑った。

「行ってらっしゃい。本当に、早く帰ってきてね、絶対よ」
「おう。お前もいい子にしてろよ」
「してる。絶対してるわ」

 銀時が屯所の門を出て、道の向こうの曲がり角を曲がって姿が見えなくなるまで、はずっと銀時を見送っていた。





「へぇ、これがさん?」

 座敷の真ん中にちょこんと正座したの前に、ヤンキー座りをして沖田が言う。
 は緊張した面持ちで頭を下げた。

「は、はじめまして」
「はじめましてでもねぇんだけど。二十年後のさんとは馴染みなんだぜ?」
「そう、なんですか?」
「本当に、全く記憶がないんですねぇ」

 山崎が何を感心しているのか、ふんふんと頷きながら言う。

「けど、キャンディ舐めたら記憶がなくなっちまうなんて、そんな設定ありましたっけ?」
「そんなものはなかったと思うけどな、銀魂仕様なんだろうか?」

 顎鬚を撫でながら、近藤が言う。
 土方を含めた、四人の真選組幹部に囲まれ、は肩身が狭そうに縮こまっていた。

「万事屋の話じゃ、キャンディさえ手に入れば元に戻れるってことなんだろう? トシ」
「どこまで本当の話か分かんねぇけどな。今はそれを信じるしかねぇし、の身に関わることなんだから、あいつのことだ、このままバックれることもねぇだろ」

 土方の吸う煙草の煙に、はむせる。三人にじとりと睨まれて、土方は仕方なく煙草の火を消した。

「まぁ、とにかく待つしかないってことだな」
さんが元に戻るまで、俺達の飯はどうなるんですか?」
「沖田隊長、こんなときに飯の心配って……」
「山崎、家政婦さんの斡旋所に連絡とってみてくれるか?」
「はい。分かりました」
「あ、あの。本当に、すいません、ご迷惑をおかけして……」
「あぁ、いいんだよ、ちゃんが気にすることじゃない!」

 近藤はの顔を覗き込みながら、力強く笑った。

ちゃんは覚えていないかもしれないが、俺達は大人になったちゃんには本当に世話になっているんだ。それが困ったことになったなら、助けてやるのは当然のことさ」

 近藤の笑い顔に、はほんの少し緊張を解いたようだ。子どもらしいまっさらな目をして身を乗り出して言った。

「あの! 私はここで、ご飯を作る仕事をしていたんですか?」

 近藤は呆気に取られながら答えた。

「あぁ。飯以外にも、掃除、洗濯と、いろいろしてくれていたよ」
「だったら、私もそれ、やります。ただここに置いてもらうわけにはいきません」
「いや、しかし、ちゃんは今子どもなんだから、そんなことをさせるわけには……」
「仮にも幕府お抱えの機関である真選組が、ガキんちょを家事に扱き使ってると知れたら、さすがに問題になるかもしれませんねぃ」
「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ、沖田隊長」
「家事ならちゃんとできます。こんなに広いお屋敷ではなかったけれど、寺子屋ではいつもやっていました。どうか、お願いします」
「しかしなぁ……」
 
 近藤と沖田と山崎が、一斉に土方を見た。
 土方は腕組みをして、眉間に深い皺を刻んでいたが、三対の目に加え、の真っ直ぐで曇りのない眼差しに根負けした。

「まぁ、いいんじゃねぇの。他にやることもねぇだろ」
「ありがとうございます!」

 は畳に額をこすりつけるように頭を下げると、ほっと口元をほころばせた。
 その笑顔を見て、近藤と山崎は目を合わせて笑い合い、沖田も何か納得したような顔をして目をしばたいた。

 小さな子どもになってしまったとはいえ、だ。働き者でいつもにこにこと笑っている穏やかで朗らかなは、間違いなくこの子どもと同じ人間なのだということを、その笑顔が物語っているようだった。

「何か困ったことがあったら、トシに相談するんだぞ。必ず助けになってやるからな!」
「はぁ!? 近藤さん、何言ってやがる!? なんで俺が!?」

 土方は目を見開いて大声を出す。

「そりゃ、お前しかいないだろうが」

 さも当然のように言う近藤に、沖田も山崎もうんうんと頷いて同意した。

「そりゃそうでしょうよ、土方さん」
「なんでだよ!? 俺は忙しいんだ! ガキの面倒なんか見てられるか!」
「トシ。仮にも子どもとは言え相手はちゃんなんだぞ? そんな風に言うことないだろ」
「土方さんっていつもさんにそんな口の利き方してるんですか? そんなんじゃそのうち嫌われっちまいますよ?」
「余計なお世話だ!」
「でも、土方さん以外の隊士ができるわけないと思いますよ。みんな子ども面倒なんか見たことないんですから」
「俺だってねぇよ」
「トシは昔っから総悟の遊び相手だったんだから、子どもには慣れてるだろ」
「何年前の話だよ……」
「とにかく、ちゃんのことはトシに任せる。いいな?」





「お前の部屋だ、好きに使いな」

 土方に連れられ屯所の離れにやってきたは、その部屋を見るなり目を見張った。

「ここを、ひとりで使っていいんですか?」
「いいもなにも、元々お前の部屋だよ」

 屯所の離れをひとつあてがったそこは、きれいに片付いてはいるが狭い。机がひとつと、箪笥がひとつあるきりだ。机の上には料理の本が重なっていて、そのうち一冊は開かれたままだ。ノートが白紙のページを広げて部屋の主を待っていた。

 暑い空気がこもっていたので、土方は窓を開けて換気をする。風が入り込んで、窓辺に吊るされた風鈴が涼しい音を立てた。台所から蚊取り線香を取ってきてライターで火をつけて窓辺に置く。つい癖で胸ポケットの煙草を探ってしまうが、思い直して止めた。

 は机の引き出しを開けて、いちいち興味深そうにため息を漏らしている。落ち着いた色のノートや筆記用具、裁縫道具、化粧道具と、赤い紅におしろい。引き出しの奥にあった貯金通帳を開いたときには、かすかに目を見開いて息を飲んだのが土方にも分かった。

「お前も混乱してるだろうから、今日はゆっくり休めよ。仕事は明日からな」

 は通帳越しに土方を見上げると、おそるおそる言った。

「このお仕事は、お給料がいいんですね」
「別に普通だと思うけど」
「でもこれ……」
「お前がびっくりするぐらい貯まってんなら、それはお前が頑張って貯金したんだろ」

 はため息を吐くと、その数字を目に焼き付けるようにして、丁寧に引き出しの奥にしまった。

「この部屋には隊士は近づいたらいけねぇことになってるから、安心して休めよ」
「近づけないって、どうしてですか?」
「大人にはいろいろあんだよ」
「でも、おじさんは部屋の中に入ってますよね、いいんですか?」

 土方は鉄パイプで頭を殴られたような衝撃を受けて、声を殺してうめいた。

「? どうかしましたか?」
「……いや、別にっ……」

 確かに、七歳の子どもから見れば二十七歳の土方は充分おじさんだろうが、直視したくない現実を目の前に突き付けられたようで吐き気がした。

「俺のことは、土方さんって呼べ」

 土方は苦し紛れに言う。

「ひじかたさん」
「何だよ?」
「大人の私って、どんな人だったんですか?」

 土方は、自分を見上げるの真っ直ぐな視線を見返して、胸が詰まる思いがした。

 その真っ直ぐな瞳。まだ一度も傷ついたことのないような、まっさらな瞳。

 ここにいるのは間違いなくなのだと理屈では分かってはいるのだが、土方はなんとなく確信を持てないでいる。近藤らは子どもの身で働かせてくれと言ったと、自分たちが知っている律儀で働き者のの姿を重ねていたようだったが、土方はそう簡単に納得できなかった。

 顔立ちに、おもかげはある。

 けれど、今目の前にいるには、この真選組屯所で過ごした日々の記憶がないのだ。

 女の身で、たったひとりで荒くれ者の男ばかりが集まった屯所に家政婦としてやってきたは、どんなわざを使ったのかは分からないが、たった一度会っただけで、警察庁長官・松平片栗虎の心を鷲掴みにし、屯所での立ち位置を不動のものにした。
 隊士達には母や姉のように慕われていた。親しく接するあまりセクハラまがいのことも受けていたが、いつも軽く笑って上手にあしらってくれ、おかげで大きな問題にならずにすんだことが何度もある。
 事件に巻き込んで辛い思いをさせてしまったこともあるが、何も言わずにそれを許してくれたの懐の深さには、ただただ感謝しかない。

 沖田が仕掛けたいたずらを笑い飛ばしてくれる優しさ。
 土方がどんなに攘夷志士を斬って血にまみれても恐れもせずにいてくれる度胸。
 どんなに辛いことがあっても、いつもにこにこと笑ってばかりいるところはありがたく思うこともあるが、ときどき無性に腹が立つこともある。

 というひとりの女の存在は、真選組にとって、そして土方にとってどれほど大きな意味を持つのか。土方はそれを分からないほど馬鹿な男ではないつもりだった。

「しっかりした奴だよ」
「しっかりって?」
「なんていうかな。料理も掃除も洗濯もちゃんとこなして、俺達にもすげぇ気ぃ遣うし、いつも機嫌いいし。そういうしっかりした奴」
「へぇ」

 まだ幼い子どものは、嬉しそうに頬を赤くして目をきらきら輝かせた。未来のこととはいえ、自分のことを褒められて嬉しかったのだろう。

 土方はのおかっぱ頭をぐしゃりと撫で、ぶっきらぼうに言った。

「ま、ガキのお前にはそこまでの期待はしてねぇから。無理せずやれよ」
「む、無理じゃないもん!」

 は土方の手を振り払うと、勢いに任せて怒鳴った。興奮するとすぐ頬が真っ赤になるところは本当に子どもらしい。

「無理だよ。ガキのくせに生意気言ってんじゃねぇ」
「できるもん! いつも寺子屋でやってるんだから!」
 
 その時、土方は胸の奥に切ない波のようなものが押し寄せるのを感じて、目を細めた。

 風鈴の音。
 蝉時雨。
 太陽の攻撃的な光が作り出す濃い影。

「なぁ」

 土方は腰をかがめてと目線を合わせた。

「お前、本当に何も覚えてねぇの?」

 はきょとんと目を丸くした。

 子ども相手に何を言っているのかと、土方も思わないではなかった。
 けれど、今目の前にいるは、土方が知っているではない。
 この子どもは確かにという人間に違いないのだろうが、この真選組屯所で共に過ごし、土方が心を許したではない。その事実は、土方にはどうしても受け入れがたいことだった。

「……ごめんなさい」

 土方の知らない子どもの姿をしたは、途方に暮れた顔をしてそう答えた。





20170703