夜が明けなければいいのにと、ときどき真剣に思う。

 残業と夜勤が続いた後の久しぶりの休日。派手な斬り合いをした後に体が泥のように重く倦む夜。松平に付き合わされて酒に飲まれた真夜中。

 夜が明けなければいいのにと思う。いずれ来る朝が憎らしくて仕方がない。

 ただ、こんな日もあった。

 夜が明けなければいいのにと思っていた。他の誰にも邪魔されず、世界にふたりきりで、ただ静かに肌を重ね合わせることが他のどんなことより気持ちよくて、このまま体ごと溶けてなくなってしまいそうな、甘い蜜のような夜は、このまま明けなけれいいのにと。

 障子の向こうから淡く差す朝日が、まだ何も身につけていないふたりの体を照らす。行灯の下では艶っぽい橙色だった肌が、黄身と桃を淡く混ぜたような白くなめらかな肌になる。大小様々な赤い花びらが身体中に散っていて、それは自分で付けたくせに驚くほど美しかった。

「そんなにじろじろみないでくださいな」

 嫌味っぽく笑いながらそう言われて、土方は苦笑いした。

 たぶん、弄ばれている。こいつは全部分かっていて、体中の美しい花びらを見せびらかしている。それに見とれさせて、楽しんでいる。

 それは、こいつの笑い顔でも一番に好きな笑い顔だと土方は思う。

「いいだろ、減るもんじゃあるまいし」

 こいつのこんな顔を見れるのなら、憎らしい朝もほんの少しだけ許してやれそうに思えた。






20170205




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