「
、水族館とかって興味ある?」
唐突に、黒尾くんが言った。
「なに突然?」
「なんか、懸賞で当たったんだけどさ、タダ券」
「黒尾くん懸賞とか応募するタイプなんだ」
「いや、親な」
「あぁ、そういうこと」
「俺練習あるし、どうせ行けないんだよね」
「相変わらず大変そうね」
「そう大変なんだよ。だからタダ券もらわねぇ?」
「私も塾あるし、暇ないよ」
「あっそう。残念」
「役に立てなくてごめんね」
「別に。こっちこそ悪ぃな」
水族館。水族館か。そういえばしばらく行っていない。小学生の時、遠足で行ったな。どんな魚がいたかとか全然覚えてないけど。あぁ、ペンギンがいたな。よちよち列をなして歩くのがかわいかった。かわいいんだけど、近くで見ると結構大きくてびっくりしたっけ。黒尾くんみたいに髪の毛ぴんと立ったペンギンは、あれなんていうんだろう。皇帝ペンギン?だったらなんかちょっとイラっとするな。黒尾くんのくせに皇帝とか。
「なにをにやにやしてんの?」
「いや、黒尾くんはペンギンに似てるなと思って」
「なにそれディスってんの?」
「いやそういうつもりはないけど」
「あ、日頃の仕返し? 言っとくけど俺、人の容姿を笑ったりしたことだけはねぇんだぞ」
「笑ってないじゃん。似てるって言ってるだけで」
「やっぱディスってんじゃん」
「あれ、髪の毛ぴーんってなってるのいるじゃない。あれ似てるよね」
「ペンギンに髪の毛なんてあんの?」
「それっぽい部位だよ。あれなんていう種類なんだろ。知ってる?」
「調べる。ぜってー似てねぇって証明する」
「なんでそんな嫌がるの?かわいいじゃんペンギン」
「だからだよ」
私が黒尾くんに似ていると思ったペンギンはイワトビペンギンという名前で、頭のつんつんは髪の毛というよりは眉毛に近かった。それはどうやら羽毛の一部らしい。
「なんか、だんだんペンギンが黒尾くんに見えてきた」
「眼科へ行け。似てねぇし」
「かわいいじゃん、黒尾くん」
「だからそれはディスってんのかって」
「褒めてるんだよ。言葉通りに受け取りなよ、なんでそんなにひねくれた言い方するの?」
黒尾くんは目を細めて私を睨むと、吐き捨てるように言った。
「かわいいとか言われたって嬉しくねぇからだよ」
私はそれをにっこりと笑い飛ばした。
いつも黒尾くんに虐められているのは私の方だもの、このくらいの意地悪は許されてしかるべきじゃない?
20170918
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