眠気覚まし






今は古文の授業中。教師陣の中でも飛び抜けて高齢のおじいちゃん先生が源氏物語「桐壺」をお経のように朗読している。

おそらく、クラスメートの半分くらいは重いまぶたと格闘しているにちがいなく、隣の席の黒尾くんも例外ではなかった。机に頬杖をついて、人の悪そうな三白眼を細くして、上まぶたと下まぶたが仲良くしないように必死に戦っているのが分かる。開いたり閉じたり、ごしごしと目をこすってみたり、欠伸を噛み殺したり、30秒ごとに眠気と戦うなにかしらの技が繰り出されて、ただ眠らないということにとても忙しそうだ。

それを横目で観察しながら、ノートの端にへのへのもへじの顔を書く。鶏のとさかみたいな髪の毛をはやして、前髪を片方にさらりと流すと黒尾くんの似顔絵になった。全然似てなかったけれど、似てないからこそ面白いような気がして、黒尾くんの肩をシャープペンの頭でつつく。

眠そうな顔でこちらを見た黒尾くんに、ノートの端にある似顔絵をシャープペンで差して見せる。黒尾くんはぱちくりと瞬きをすると、何もリアクションせずに机に視線を戻した。

何かひとこと言ってくれたっていいじゃない。そう思って仕返しに、黒尾くんの似顔絵のとなりに髑髏マークを書き足す。せっかく眠気覚ましになるかと思ったのに。

唇を尖らせて、鼻と上唇の間にシャープペンを挟む。源氏物語「桐壺」は最終段階。光の君が三つになって袴着の儀式が云々。その時、肩をつんつんとつつかれた。

見ると、黒尾くんがノートの端を指差していた。見ると、そこにはへのへのもへじの顔が、前髪を上げておでこをばっちり出した私と同じ髪型に仕立て上げられ、得意げに笑っていた。

私は黒尾くんのノートに手を伸ばし、

『昼ごはんは焼きそばパン!!』

と書き込んだ。黒尾くんも私のノートに腕を伸ばしてきて、

『売切れ必至』

と書き込んだ。





20150104



授業中にこうやって遊べる友達って貴重だよね。