6.頬杖をつく





先生が解説を交えながら黒板にチョークを走らせる音がコツコツと響いている数学の授業中。

黒尾くんは頬杖をついて、じっと黒板を見ている。手のひらに乗せた顎のラインが綺麗な曲線を描いて、喉仏の山に連なっている。背が高すぎて体に合っていない机は黒尾くんには低すぎるようで、見事な猫背だ。なんだかとても肩がこりそう。

ぼんやりそんなことを考えながら、私も黒尾くんと同じように頬杖をつく。手のひらに顎を乗せて、そこに体重をかける。重心をどこに置いていいのか少し迷って、居心地のいい場所を見つけるのにほんの少し時間がかかる。私が黒尾くんと同じような動作をしても、黒尾くんほどは猫背にならないし、肩もこりそうにない。

「それじゃ、40ページの問1を解いて、できたら隣同士で答え合わせしてみようか」

と、先生が黒板に向かって大きな声を出した。

言われたとおりに問題を解いて、黒尾くんの方を見やる。私より少し遅れて問題を解き終わった黒尾くんは、器用にも頬杖をついたまま私の方に振り向いた。

「解けた?」

「解けた」

頬杖をついたままだから、顔が真横になって、逆立った髪も真横になる。まるで昼寝をしていたところを無理やりたたき起こされたみたいな風情だな、と思うとちょっとおかしかった。

「答えなんになった?」

「2X」

「うそ、俺3」

「いや2でしょ」

「まじで」

黒尾くんはノートを見下ろして、頬杖をついた指で頬をかいた。たぶん、黒尾くんが頬杖をつくのは、何かを一生懸命考えるときの癖なかもしれない。黒尾くんの頬杖は、猫背とセットになって、まるで大きな大きな猫みたいだった。豹か、虎か、チーターか、黒尾くんはそんなものに似ている。

「あ、本当だ。2だ」

「でしょ」

「さすが」

「どうも」

「はぁい、できたら次いくよー」

先生がまた、黒板に向かって叫んだ。