4. 抱きつく





部活が終わってから、ちょっと職員室に寄って来るからという徹を、学校の正門の前で待っていた。

息が見えるほど寒い冬の日の今日は、放射冷却がどうとかで今期一番の冷え込みだそうだ。空はあんなにきれいに晴れているのに、山沿いにかかった雲からちぎって撒いたような雪がちらほらと降っている。この時期の仙台にはよくある天気だ。

学校指定のダッフルコートに体を包み、毛糸のマフラーに顎まで埋めても寒いものは寒い。下校する生徒がちらほらそばを通り過ぎていくと、それを追いかけるように冷たい風が巻き起こって前髪が揺れる。鼻先が冷えてつんとして、私はポケットの中でホッカイロをぎゅっと握りしめた。

そもそも私は冬が苦手だ。分厚いコートやセーターは重苦しくて、マフラーは首まわりがちくちくするし、つま先や指先が冷えて力が入らなくなるのも嫌だし、空気が乾燥していてすぐ喉が渇くのも嫌だ。ぎゅっと肩を縮こませて寒さに耐えていると、暗くて狭い空間に閉じ込められているような錯覚に陥って気持ちも落ち着かない。白い煙のようなため息を吐いて、もやもやした気持ちをなんとか誤魔化そうとした時、背中から大きな腕が伸びてきて私の体にぎゅっと巻き付いた。

「お待たせ!」

「きゃぁあ!」

反射的に、その腕を振りほどいて腕の持ち主を突き飛ばした私は、驚きのあまりどきどき鳴っている胸を押さえてはっと我に返る。そこには、あっけにとられて両手を上げた徹がいた。

「そんなに驚くことないじゃん」

わざとらしく傷ついたような声で、徹はへらりと笑った。その笑い顔が、私の神経を逆なでする。ちょうど、私たちのそばを女子生徒がふたり、顔を見合わせて通り過ぎていって、恥ずかしさのあまり顔がぼっと熱くなったのが嫌でもわかった。

「急に、何するのよ!?」

怒りに任せてそう声を上げるけれど、徹はちっとも詫びれずにへらへら笑った。

「びっくりさせようと思ったんだよ」

「こんなところで!?」

「え? 場所が問題?」

「人前でそういうことしないでって言ってるの!」

「いいじゃん、別に。俺たち付き合ってるんだし」

「恥ずかしいの! もう、本当止めて!」

「えぇ? どうしようかなぁ?」

私がいくら怒っても、徹には全然響かないらしく、むしろ余計に楽しそうにそう言うので、もう堪忍袋の緒が切れてしまった。

「何大声出してんだよ?」

ちょうど、岩ちゃんが私たちに追いついてきたので、私は反射的に岩ちゃんの腕を掴んだ。

「もういい! 徹なんか待ってるんじゃなかった! 私岩ちゃんと帰る!」

「え? 何? どうした?」

「行こう岩ちゃん! 肉まんおごってあげるから!」

「えぇ? ちょっと、待ってよ!」

訳がわからないながらも私と歩調を合わせてくれる岩ちゃんの腕を掴みながら、へらへら笑いながら後を追ってくる徹を徹底的に無視した。

私は冬と同じくらい徹のことが嫌いだ。こういう時、心の底からそう思う。