台所の勝手口から外に出て、
の住処である離れへ移動する。離れは外とほとんど変わらない気温で、
は手のひらをこすり合わせながらストーブのスイッチを入れた。
「すいません。温まってなくて」
「別にいいよ」
土方は畳を見下ろして気持ちを高ぶらせた。そこにはもう布団が敷いてあって、上掛けをめくると毛布の下に湯たんぽが仕込んであった。
「準備万端じゃねぇか」
布団の上に腰を下ろしながら感心して言った土方に、
は唇を尖らせて答えた。
「土方さんのためじゃありませんから」
「本当に期待してなかった?」
「してません。仕事があるって分かってたんですから」
「じゃぁ迷惑か?」
は土方の隣に膝をつくと、甘えるように土方の肩に手を添えてきた。
「そこまでは言ってません」
土方は
の腰を掴んで引き寄せ、足の間に
の体を入れた。警察犬が匂いをたどって犯人の後を追うように、
の首筋を鼻先でなぞる。乾いた汗の匂いがするそこも冷たい。火を使う台所は真冬でも汗をかくほど暑くなるものらしいが、この寒さで汗が渇いて
の体温を奪ったのだ。
首を筋を舐め上げ、耳の後ろの弱いところに音を立てて吸い付くと、
はか細い息を吐きながら土方の袖にしがみついてきた。そのまま布団に押し倒して体の上にまたがる。
横たわると帯が背中につかえてしまって、
は体を斜めに傾けた。ひねった腰や、細い肩のしながなんとも言えず蠱惑的で、土方は
の腰の高いとこに股間を押し付けて体を密着させる。和服は体に馴染んでいるから着心地はいいが、洋服と比べれば動きにくい。動きやすい洋装で不自由そうな和服の女を攻めるのはそそられた。
この寒い夜に着物を脱がすのは良心が咎めて、土方は帯には触れないことにした。
の頬や耳やうなじに唇を這わせながら、裾を割って手を差し込む。寒さに縮こまった足を揉みしだくように撫でる。それに合わせて
の呼吸が早くなって、吐息を吸い上げるように
の唇を吸った。
は手探りで土方の股間を探り当てると、ズボンの上から土方の竿を上下にしごいた。誘うような手付きに熱が集まってくるのを感じ、土方は情熱を込めて口付けを返す。
の体を土方が濡らし、土方の体を
が固くした。お互いが互いの体を整えて準備してやることが楽しくて時間を忘れてしまいそうになったが、先に声を上げたのは
だった。
「土方さん、寒い」
「うん」
「もっと、温めて」
ねだるように言われて、土方は素直に従った。
体を起こして上着を脱ぎ、ベルトを外してズボンの前を緩める。
は着物の裾を持ち上げると土方に背中を向けて腰を突き出してきた。土方がゴムを着けている間、
のそこはひくひくと震えて待ち遠しそうに土方を見つめていた。
「入れるぞ」
「えぇ、来て」
ゆっくりと腰を進める土方の動きに合わせて、
は静かに喘いだ。
「大丈夫か?」
「ん、あったかくて、気持ちいい」
が後ろ手に腕を伸ばしてきたので、土方はそれを掴んで上体を引き上げると背中から
を抱きしめた。
は土方が動きやすいように海老のように腰を反らせている。
の奥深いところまで届くように腰をぶつけると喘ぎ声が高くなった。
土方にしがみつく
の腕や、裾をまくり上げて露になった太腿や脛が見た目にも寒々しかったが、土方とつながったところを中心に徐々に内側から熱くなっていく。
土方は
の尻に腰を叩きつけるように動かした。
が喘ぐたび、その細い腰が土方のものを求めて揺れる。うなじから匂い立つ
の肌の匂いに頭がくらくらした。甘えるような目をして
が首をのけ反らせてくるから口づけをして応える。唇の端から涎が垂れて着物を汚したが、それがどちらの涎なのかふたりにも分からなかった。
やがて寒さも気にならないほどに汗ばんできたのは、ようやく部屋が温まってきたからではなく、体の粘膜をこすりつけて生み出した炎がふたりの体を取り巻くように大きく燃え上がったからだ。
ふと、遠くから低い鐘の音がして、ふたりは同時に体を休めた。規則正しいリズムで空から響いてくる鐘の音は幻想的で、ふたりは荒い呼吸をしながらその音色に耳を傾けた。
「年が明けますね」
が囁く。土方は
の肩にあごを乗せて、楽な姿勢を取りながら息を整えた。
「そうだな」
「こんなことしながら年を越すなんて」
「悪くないだろ」
土方は鐘の音に合わせて腰を動かしてみる。そのわざとらしさに、
は笑い交じりの声を出してよがった。
「ちょっと、止めて」
「なんで」
「ふざけないで、ばか」
「体は好きだって言ってる」
「言ってないってば」
土方は
の腰を掴んで容赦なく突き上げる。
はびくびくと体を震わせて天を仰ぐ。
の体は強く土方を締め上げて、もっと奥に欲しいと無言の叫び声を上げている。土方はその声に答えて
の体の一番奥に体を叩きつけるようにして白い精を吐き出した。
はそれを受け止めた勢いで布団に倒れ込んでしまった。
ふたりが正気を取り戻して体を起こしたころには、鐘の音は止んで新しい年が幕を開けていた。
身なりを整えて食堂に戻り、
は汚れた食器を流しに片付け、土方は携帯電話で状況を確認した。軽微な事故がいくつかあったようだが、大きな混乱はないようだった。
「じゃぁ、仕事に戻るな」
土方は上着を羽織りながら言う。
は手を止めて目を丸くした。
「仕事は終わったんじゃなかったんですか?」
「近藤さんがいねぇのに俺が休むわけにいかねぇだろ」
「嘘吐いてまで、何やってるんですか」
「お前だって共犯だろうが」
土方は意地の悪そうな笑み浮かべて言う。
はぐっと唇を引き結び、悔しそうに土方を睨んだ。
「何事もなくて良かったですね」
「お前はそれ終わったらさっさと休めよ」
「言われなくてもそうします。明日も早いですから」
土方はカウンター越しに
の真正面に立つと、腕を伸ばして
の頬に触れた。紅潮した頬はこの寒さのせいだと言えば言い訳もたつだろうが、土方の腕の中で甘く蕩けた残り香がまだ体中にまとわりついている。こんな
をここにひとり残していくのは気が咎めた。けれどこれ以上仕事を抜け出すわけにもいかない。
「何ですか?」
「なんでもねぇよ、おやすみ」
指先で
の頬を軽くはじいて、土方は踵を返す。煙草に火を着けて扉に手をかけるのと、
が声を出したのはほとんど同時だった。
「土方さん」
煙草を咥えて振り返ると、
がカウンターの向こうから身を乗り出して土方を見ていた。その名残惜しそうな眼差し。今すぐ駆け寄って抱きしめて、仕事や責任も全部放り出して、どこか温かい場所へふたりで高飛びしてしまいたいような、切羽詰まった気持ちになる。
土方の考えていることを全て見抜いたような微笑みを浮かべ、
は言った。
「あけましておめでとう」
良いお年を。
20181231